これまで「贈与税」や「生前贈与」、「贈与税がかかるケース」についてお話しました。
今回は贈与税の特例、贈与税がかからないケースについてお話します。
贈与税が面白いのは、さまざまな特例や減税措置によって非課税となるケースがいくつも用意されているところです。非課税となる代表的な特例や制度、ケースについて紹介していきましょう。なお具体的な非課税の仕組みついては、後ほど説明します。
【配偶者控除】
「おしどり贈与」とも呼ばれている特例制度です。婚姻期間が20年以上の長年連れ添った夫婦同士で、居住用の不動産を贈与した場合に適用されます。単にマイホームなどを譲り受けたケースはもちろん、新たな居住用の不動産を購入するための資金を贈与したケースも適用対象です。控除額は、贈与のあった年分の贈与税課税価格から最大で 2000万円となります。
この配偶者控除は、暦年課税制度の基礎控除と合算できます。結果的に配偶者控除の2000万円と、暦年課税制度の基礎控除110万円を合わせた2110万円が控除できることになります。
【生前贈与の非課税枠】
・暦年課税制度の基礎控除110万円
贈与税の課税方式の項目でも出てきた制度です。親子間だけでなく、他人や法人などから贈与を受けたとしても適用対象になります。なお注意すべき、毎年一定額の生前贈与を行っているケースです。「定期贈与」という法律行為に当たり、基礎控除の対象外となります。
・相続時精算課税制度
こちらも贈与税の課税方式の項目でも出てきた制度です。節税目的の場合は、相続財産の規模や相続税の減額措置などを考慮した上で活用する必要があります。
【住宅取得等資金贈与の非課税制度】
2015(平成27)年から2021(令和3)年までの間、祖父母や両親などの直系尊属から住宅取得資金として受けた贈与に対して非課税となる制度です。あくまでも居住用の不動産の購入資金として、贈与されたという点が重要になります。
限度額は新築等をする住宅用の家屋の種類ごとに「受贈者が最初に非課税の特例適用を受けようとする住宅用の家屋の新築等に係る契約の締結日」によって決まります。
2021(令和3)年4月1日から同年12月31日までに契約した住宅で、その住宅が省エネ等住宅であれば、非課税限度枠は最大 1200万円になります。
【非課税限度額】
大きなメリットとして、「相続時精算課税制度」と併用して活用できるため、その場合は最大で 3700万円まで非課税にできるという点(ただし前述した通り、省エネ、耐震基準を満たす住宅である必要があります)。デメリットは住宅の購入が対象なので土地だけの購入には使えないこと(住宅を建てるのに合わせて購入した土地であれば対象)や、住宅ローンの支払いには活用できないことです。
法人から個人へ土地などを贈与するケースは、会社の役員や従業員に対して行うパターンと第三者に行うパターンが考えられます。このケースでは、受贈者となった個人に関しては賞与や一時的な収入があったとみなされるため、贈与税ではなく「所得税および住民税の対象」となります。
親の所有する土地の上に子どもが家を建てる、あるいは親が所有する家と土地のうち、家を子どもに生前贈与したというケースはよくあります。このような場合、通常は子どもから親が賃料を取ったりはしないはずですから、これは法律上では「使用貸借」契約です。
使用貸借はいわば無償での賃貸借契約ともいうべきもので、収益の出ない、経済的な価値自体はない契約と考えられています。そのため、贈与税は非課税です。ただし地代を受け取ったり権利金のやりとりがあったりすると、贈与税がかかることがあります。