犯罪などで時効という言葉は目にしたり聞いたりすることがあると思いますが、不動産には「取得時効」というものがあります。
今回はあまり聞かない「取得時効」についてお話します。
この取得時効とは、他人の土地や不動産であるにも関わらず、その土地や不動産を自分の土地などと信じて、一定期間使用していると、本当に自分の土地や不動産になってしまう制度のことです。
もう少し詳しく解説します。
取得時効を主張するには3つの要件を満たす必要があります。
①所有の意思を持っていること
②平穏かつ公然に他人物を占有すること
③一定期間占有すること
ポイントは所有の意思がなければ、取得時効は成立しないということです。
もうひとつ、建物を人に貸すことによって、自分は占有していないが、占有してもらう場合も、占有していることになります。
これを、間接占有といいます。
では、一定期間とはどれだけの期間なのでしょうか?
起算点:所有の意思をもって目的物の所持を始めた時から
時効期間:最初から自分のものと思っていた(善意無過失)場合→10年
他人のものであることを知っていた(善意無過失ではない)場合→20年
また、この占有期間は中断がないことがが要件となります。
この中断には以下のようなものが該当します。
・請求
裁判や、裁判以外の請求(催告)が中断事由となり、この場合、6カ月以内に裁判上の請求などの強力な手段をとることが必要となります。
・差押・仮差押・仮処分
・承認
・占有を失った場合
中断された場合、それまでの期間はゼロとなり、中断事由終了のときから再び時効が進行します。
時効は時間の経過により権利を得たり失ったりする制度です。
一部には「借りたお金は絶対に返すべきだ」という考えの基、このような制度を好まない人も当然にいるはずです。
そこで、時効により利益を得る者の意思を尊重するために設けられたのが、援用・放棄の制度です。
・援用
当事者は、時効の成立を主張しなければ、時効による利益を受けることはできません。 したがって、消滅時効が完成しているのにお金を支払った場合には、返してもらうことはできません。
・放棄
一方、時効による利益を受けることを潔しとしない者は、その利益を放棄することができます。 しかし、時効完成前にあらかじめ時効の利益を放棄することができません。
時効の成立を主張した場合、起算日にさかのぼって権利を取得します。
取得時効を主張する者は、自分の占有期間のみでなく、前者の占有の期間も併せて主張することができます。
ただし、前者の占有の瑕疵(=欠点・マイナス点)も引き継ぐこととなります。
そもそも時効とは、長い間ある状態が続いているので、その状態を尊重するために認められた制度です。
だとすれば、ある状態がなくなったのであれば、その時点までの状態を尊重する必要はありません。
そこで認められるのが「中断」です。
・時効により不動産の所有権を取得した者は、時効の進行中に元々の所有者から所有権を取得して登記をした者に対しては、登記がなくても、時効による所有権の取得を主張することができます。
・時効の完成により不動産の所有権を取得した者は、その登記をしなければ、時効完成後にその不動産を元々の所有者から取得して所有権移転登記を備えた第三者に対し、所有権を対抗することはできません。
これは判例の考え方に基づいています。