現在、変動金利をはじめ1%を下回る住宅ローン商品が多く出回っています。例えば、3000万円の住宅ローンを期間30年、金利0.5%の元利均等方式で借りた場合、年間(12回分)の金利支払額はおよそ14万8000円となります。
一方、12回支払い後の残高はまだ2900万円以上あるため、初年度の住宅ローン控除額は約29万円となります。支払った利息以上に減税効果があることが分かります。
そもそも一定の金利を支払いながら住宅を購入した人への税負担軽減という位置づけである住宅ローン控除ですが、現在はむしろ、金利負担よりも税金還付の方が多いという状況になっているのです。
会計検査院が2019年11月に行った報告によりますと、住宅ローン控除適用者のうち78.1%が上記のように支払利息よりも税額控除の方が大きい状況にあるということが分かりました。そこで、ローン控除について見直すという気運が高まっているのです。
令和3年度の税制改正では「1%を上限に支払利息額を考慮して控除するなど、 控除額や控除率の在り方を令和 4 年度(2022 年度) 税制改正において見直すものとする」とし、具体的な改正は行われず、先送りされることになりました。
現時点では具体的なことは決まっていませんが、令和4年度の税制改正で見直されるのでは?という見方もあります。その内容は「年末の残高×1%とその年に支払った利息総額の少ない方に改正される」というのが一つの案のようです。
よって、先ほどの例ではローン残高の1%に比べ、年間での支払利息14万8000円の方が小さいため、この額がその年の住宅ローン控除となるのです。
住宅ローン控除の見直しが令和4年以降の購入からなのか、またはもう1~2年先になるのか。現段階では分かりませんが、仮に見直しが行われたとしても慌てて住宅を購入するということはやめたほうがよいです。
確かに現状のような低金利でなおかつ毎年年末ローン残高の1%分の減税が受けられるのは魅力的です。ただし、見直し後も「1%を下回る低金利」が条件になります。言い換えれば、1%を超えるような金利状況または住宅ローン商品については従前どおりと捉えることができます。
仮に見直し後の制度に該当しても、それは「超低金利で住宅ローンを組むことができている」という証でもあります。「新しいローン控除制度が導入される前に」と急いで住宅購入をするのはあまりおすすめしません。「1%と金利」という小さな差にこだわるあまり、何か大きな判断ミスをしかねません。冷静に対応してください。
また、現在住宅ローン控除を適用している人はどうなるのでしょうか?こちらも具体的な案が出ていないため推測の範囲内ですが、おそらくさかのぼって新たな住宅ローン控除が適用されることはないと思われます。
住宅ローン控除は今までローンの上限や控除期間、そして控除率など毎年見直しが行われてきましたが、対象者は“その時点”の住宅ローン控除で毎年控除を受けています。よって、今回の見直しも含め、現在住宅ローン控除を適用している人への影響はないものと思われます。