前回お話した「時効取得」は、もともとは自分が所有していなかった土地や不動産の所有権を得ることができますが、土地購入の際や相続時に関連する場合があります。
今回は、時効取得における注意すべきケースをお話します。
注意① 土地の名義変更をしていない
亡くなった祖父が生前に土地を購入し、家を建てたのちに長年生活をしていたが、祖父が亡くなったあとに土地の名義を確認したところ、購入時に前所有者から祖父へ名義変更が行われていなかったことが判明する、といったケースがあります。
こうした場合、亡くなった方の所有していた土地の所有権は、相続人に渡るのが一般的なので、まずは名義人となっている方の相続人を探すことから始まります。
そのうえで、売買契約書等の登記のために必要な書類があれば、所有権移転登記を求めることは可能です。売買契約書等の書類がない場合は、時効取得をもって所有権移転登記を求めることもできます。
注意② 土地購入の際に所有者を明確に確認していない
売買契約によって土地を購入。しかし、売主はその土地の所有者ではなく、年月がたったあとに本来の所有者から連絡またはクレームが届く、ということも考えられます。
買主の土地の占有が10年または20年以上継続していれば、時効取得が成立する可能性が高いので、一度弁護士に相談してみましょう。
注意③ 自宅の所有者を明確に確認できていない
父が30年以上生活していた自宅を、父が亡くなったあとに相続し、処分しようとした際に、自宅の庭の一部が隣地所有者の土地の一部であったことが判明。隣地所有者からクレームを言われたわけではないが、どのように対応すべきか迷うというようなケースがあります。
時効取得が成立した場合は、所有権移転登記をすることにより、住宅と一緒に売却が可能です。しかし、隣地所有者の土地の一部にも所有権移転登記を行う必要があるので、事前に現在の隣地所有者に時効取得の旨を伝え、所有権移転登記をしてもらう必要があります。
注意④ 自宅の増改築により境界線を越えた
住宅が密集している地域で、自宅の増改築を行ったとします。30年以上たった頃に、増改築した一部が隣の家の境界線を越えているとクレームが届くケースがあります。
こうした場合には、増改築部分の土地の所有権がどちらにあるかが問題となります。境界線を越えた部分に時効取得が成立するか、弁護士に問合せをしましょう。
このように「時効取得」に関しては弁護士に相談することをおすすめします。