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アフターコロナ・不動産オンライン化

カテゴリ:不動産コラム
新型コロナウイルス感染症の影響で、飲食業界ではテイクアウトやデリバリーが主流になるなど、ソーシャルディスタンスを念頭においたビジネスモデルへと急変革が起きています。

人と接することの多い不動産業界も例外ではありません。

IT化が遅れているといわれている不動産業界ですが、アフターコロナを見据えてオンライン化が加速すれば、不動産市場全体の活性化につながる可能性もあります。

今回は不動産売買のオンライン化が今後の取引に与える影響について考えてみたいと思います。





1.不動産業界のオンライン化とは
不動産売買のIT化がなかなか進まなかった理由の1つが「重要事項説明」です。

重要事項説明とは売買契約に先立って、宅地建物取引士が買主に対して「対面」にて行う説明のことです。

この対面という規定が、不動産売買の取引において非常に大きな足かせになります。

例えば、都内の投資マンションを販売する場合、都内の投資家だけに売るとは限りません。北海道や沖縄の投資家に売るとなると、重要事項説明をするためだけに買主に東京に来てもらうか、もしくは宅建士が買主のいる場所まで出張しなければならないのです。

日程調整に時間がかかる
交通費がかかる
広範囲での営業活動がやりにくい
このようなデメリットがあるのですが、今回のコロナ禍で実はこれらの問題が一気に解消に向かう可能性が出てきました。

2.IT重説が急加速する
重要事項説明をスムーズにして不動産取引を活性化させるために、2019年10月からIT重説の社会実験がすでにスタートしています。

※参考:国土交通省 個人を含む売買取引おけるITを活用した重要事項説明に係る社会実験(実施経過報告)https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001337784.pdf

IT重説とはスカイプやZOOMといったアプリを使用することで、オンライン上で重要事項説明を行うというやり方で、これまで対面で行っていた手続きをオンラインで完結できるので、物理的に会って重説する必要がなくなるのです。

IT重説の現状
売買のIT重説は、まだ正式に認められているわけではなく、参加企業による社会実験段階であり、2020年9月30日までを予定しています。

ところが現状はというと59社が登録事業者として参加しているのに対して、実際にIT重説を実施できたのは5社(合計で143件)で、うち139件が投資用物件という結果でした。

IT重説の実施件数がなかなか伸びないのは、次のような事情が関係していると考えられます。

対面による安心感がいい
初めてという漠然とした抵抗感
買主側の通信環境が整っていない
本来、IT重説を活用すれば大幅に取引はスムーズに運べるはずなのに、社会全体のマインドが重要な手続きをオンラインで行うということに前向きではなかったのです。

ですが、コロナ禍で一転して対面での取引を敬遠する人が増えることから、買主側もIT重説に対して積極的に協力してくれるようになる可能性が考えられます。

感染リスクを避けるため、対面は避けたい(会わない方が安心)
オンラインでの対話が日常になる(抵抗感がなくなる)
スカイプやZOOMなどのユーザー自体が増える
このように、IT重説の足かせだった要因が全てプラスに転じることで、一気に普及する可能性があるのです。



3.フルオンライン取引の時代へ
IT重説が普及すると、さらにその先が見えてきます。

それは、不動産取引のフルオンライン化です。

不動産取引の中で最難関部分である重要事項説明がオンライン化できれば、他の部分についてのオンライン化は難しくありません。

不動産投資セミナー
個別面談
物件見学(VR内見など)
これらの部分については、法改正がなくてもオンライン化が可能なので、IT重説で整備した通信環境があればすべて実現が可能です。

登記手続きにおける司法書士との面談は別として、今後不動産取引が完全にオンライン化できる可能性が大きく高まるでしょう。

4.オンライン化で不動産取引が活性化される
各業界、各企業がアフターコロナの対策を模索していますが、不動産売買についてはある意味で「怪我の功名」という形でIT重説の普及が加速的に進んで、不動産取引件数が増加する可能性もありえます。

これまで不動産業者が手続きをオンラインでしようとすると、買主側からの抵抗があり結局対面になってしまうケースが多かったのですが、今後はコロナ禍の影響で買主側からオンライン手続きを希望されることになるかもしれません。

そうなれば、経費や効率を考えて諦めていた不動産業者が、全国の買主を対象に積極的に営業活動ができるようになり、今よりも投資物件を中心に不動産取引が活性化するでしょう。



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柳田 直喜

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