不動産を売るときの手段として「買取」があります。
あまり一般的な売却手段ではないため、「仲介とどう違うの?」「不動産会社に安く買いたたかれないか不安」など心配している方もいるのではないでしょうか?
今回は、不動産を売るときに買取を選択しようとしている方に向けて、買取のメリット・デメリットや、どんな物件が買取に向いているのか、買取業者の選び方などについて解説します。
1. 不動産買取とは?
仲介と買取の違いに関するイメージ画像
ブランド品や自動車を売るときの選択肢として、「買取」という言葉には馴染みがある方もいるのではないでしょうか。ですが、不動産においてはあまり一般的な方法ではありません。
まずは不動産買取の特徴と、仲介との違いについて見ていきましょう。
1.1 不動産における買取の特徴
不動産の買取とは、不動産買取業をおこなう不動産会社が、あなたの物件を直接買い取る方法です。
市場に向けた販売活動は行われず、売り主と買取業者の間で交渉が成立すればすぐに買い取ってくれるというもの。見積もりをしてから早ければ1週間ほどで売却が完了するので、早く現金化できるというメリットがあります。
買取業者は個人から不動産を買い取ったあと、数百万円かけてリフォームやリノベーションを行い、その分の金額を上乗せして再度売りに出します。すべての不動産会社で買取を行っているわけではないため、査定の時点で不動産会社に確認しておくとよいでしょう。
1.2 「仲介」と「買取」の違い
不動産の売却でよく聞く「仲介」と、「買取」は何が違うのでしょうか?
「仲介」とは、仲介業者(不動産会社)を経由して、不動産を欲しがっている買主(主に一般人)を探す方法。仲介業者は不動産ポータルサイトや新聞折り込み広告など様々な媒体を使い、物件の購入希望者を探します。
同じ不動産を売却する方法でも、買取と仲介は「買主」「売却期間」「売却価格」「費用」の点で異なります。
買取の場合、不動産会社が「買う」と決めればすぐに契約は完了します。
そのため、査定から最短1週間~1か月ほどの比較的短い期間で売却が可能です。
一方、仲介の場合は、仲介業者が買主を探すことから始めなくてはなりません。仲介業者が広告を出して買主を募集し、内覧などの対応も必要になるため、買取よりも売却が完了するまでに時間がかかります。
仲介と買取の良いとこ取り?「買取保証」とは
「買取保証」とは、はじめに「仲介」で一定期間契約し、売れなかった際にあらかじめ取り決めていた額で不動産会社が「買取」をする売却方法です。
簡単に言えば、仲介と買取のミックスです。
買取保証で契約を結べば、少しでも高く売れる可能性を残しつつ、時期が来たら確実に買い取ってもらえるというメリットがあります。
たとえば、「数か月後に転勤するまでに売りたい」という少し余裕がある場合は、とても良い選択肢でしょう。
2. 不動産買取のメリット
仲介と比べて異なる点が多い買取では、様々なメリットも存在します。
売主にとって、不動産買取を選ぶメリットは以下の5つです。
売れるまでの期間が短い
近所の人に知られず売却できる
瑕疵担保責任が無い
売り出し中に内見などの対応が必要ない
仲介手数料が発生しない
1. 売れるまでの期間が短い
仲介の場合、一般的には3ヶ月ほどで売却できることが多いですが、年単位でかかる場合もあります。
その点、買取の場合は不動産業者が直接買取ってくれるので、すぐに売買契約を結ぶことができます。
現金化を急いでいる場合や、その後の資金繰りや引っ越しなどのスケジュールを早く組みたい人に向いています。
2. 近所の人に知られず売却できる
仲介の場合、新聞折り込み広告やポータプルサイトに物件情報が掲載されるため、近隣の方に売り出し中であることが知られる可能性もあります。
一方、買取であれば不動産会社とのやりとりのみなので、近所の人に知られることなく売却を完了することができるのがメリットです。
3. 瑕疵担保責任が無い
瑕疵担保とは、引き渡し後に発見された問題などに対して責任を持つことです。
シロアリ被害や配管の不具合、漏水など、見えない欠陥についての責任があります。
仲介の場合は売り主に瑕疵担保責任があることが多いですが、買取では不動産業者が所有者になるため、売り主の瑕疵担保責任は免除されます。
売却後に欠陥が発覚したとしても、後から修理費などを払う必要はありません。
4. 売り出し中に内見などの対応が必要ない
仲介売却の場合は、購入を検討中の人や物件探し中の人に向けて内覧会として自宅を開放する必要があります。
実際に見てもらい、その物件の特徴や仕様を知ってもらうためにはかかせません。
一方買取の場合は、不動産業者が見て確認するのみ。
特別な要望がない限り内覧会などの公開は必要がありません。
5. 仲介手数料が発生しない
買取では不動産業者が直接買い取るので、仲介手数料はかかりません。
仲介では購入者と売り主の間に業者が入るため、仲介手数料が発生します。仲介手数料は(売買価格 × 3% + 6万円) + 消費税となるので、1000万円で売却した場合、約40万円ほどが仲介手数料として支払うことになります。
買取ではこれらが発生しないのはメリットと言えるでしょう。
3. 不動産買取のデメリット
買取を選んだ場合の唯一のデメリットは、一般的な相場に比べて売却価格が安くなることです。
買取業者は相場価格で売り出すために、買取価格は相場よりも低く提示する傾向にあります。市場の相場価格で買い取ってしまうと、買取後のリノベーションやハウスクリーニングなどに料金が発生するため、業者自体の利益が出なくなってしまうのです。
そのため一般的には、相場の60~70%の価格になることが多いと言われています。かなり安くなってしまうため、「価格は問わないから、とにかく早く売りたい」という方に向いている手段です。
4. 買取が向いている不動産の条件
「早く売りたいけど、買取と仲介どっちがいいのか迷う…」という方もいらっしゃると思います。
ただし、次の5つのケースに当てはまる物件の場合は仲介よりも買取の方がおすすめと言えるでしょう。
築年数が古い物件、もしくは旧耐震基準のマンション
内部の状態が悪くリフォームが必要な物件
事故やトラブルがあった物件
短期間(1か月以内)に売りたい場合
仲介で長期間売れない物件
4.1 築年数が古い物件、もしくは旧耐震基準のマンション
一般的に、築年数が古くなれば古くなるほど市場の価値は下がると言われています。
古くなると買い手がつきにくく、リフォームやリノベーションをして売りに出す人もいますが、買取であればそのままの状態で売却することが可能です。
また、日本は地震大国ということもあり、マンションの場合は耐震性を気にする購入者の方は多いです。旧耐震基準(1981年5月以前に設計された建物)は仲介では買い手がつきにくい傾向にあるため、買取の方が向いていると言えるでしょう。
そのほか、築30年を超える中古マンションは外装に目立った傷がなくても、目に見えない水道管などが老朽化していたりと売却後に高額な修繕費がかかる可能性があります。
万が一仲介で売却できたとしても、後から大きな欠陥が見つかった場合、瑕疵担保責任により売り主が修繕費を負担しなくてはなりません。
こういったリスクを回避するためにも、築古の中古マンションは買取がおすすめです。
4.2 内部の状態が悪くリフォームが必要な物件
室内の状態が悪い物件の場合も買取が向いています。
壁や床など内装の状態が悪いと、内覧時にマイナスイメージがつきやすく、仲介での売却は不利になってしまいます。一方、買取であれば不動産会社がリフォームやリノベーションをすることが多いため、内装の状態が悪くても問題なく買い取ってもらえる傾向にあります。
また、自分でリフォームしてから仲介で売却するよりも、不動産会社に買い取ってもらったほうが、結果的に手元に残るお金が増えるケースもあります。
内装の状態が悪い物件を売却するなら、成約につながりやすい買取を選びましょう。
4.3 事故やトラブルがあった物件
事件・事故などトラブルがあった物件についても、仲介では売れにくいため買取の方がおすすめです。
たとえば隣の部屋で自殺があった物件などは、なかなか売り手がつかないというのは想像しやすいのではないでしょうか。
購入者にとって不利益になる情報だとしても、売主には「告知義務」があるため、正直に伝えなければなりません。
仮に仲介で個人を相手に売却が成立したとしても、売却後にトラブルにつながることもあります。
事件や事故のあった物件の場合も、不動産会社に買い取ってもらう方が安心と言えるでしょう。
4.4 短期間(1か月以内)で売りたい場合
不動産自体には何も問題はないものの、とにかく早く手放す必要がある、すぐに手元に現金が必要という場合も買取が適しています。
戸建てに比べてマンションは買い手が見つかりやすいと言われており、上記に当てはまる物件ではなく適正価格で売り出していれば3か月~半年で売却が可能でしょう。
ただし、急な転勤など何かしらの理由で1~2か月以内に売却を完了させる必要があるといった場合は、新居の購入を考えてもそんなに待てないという方もいるかもしれません。
このように、「いつまでに売却を完了させたいか」が明確である場合は、買取、もしくは買取保証での売却を選択すると良いでしょう。
4.5 仲介で長期間売れない物件
すでに仲介で売りに出しているにも関わらず、半年以上反響がなかったり、反響はあっても1年以上買い手がついていない場合も買取という選択肢を考えてもよいでしょう。
立地が悪かったり、耐震性の問題などで買い手がつかない場合は売れ残ってしまう可能性があります。マンションは築年数が15年を過ぎると徐々に価値が下がってきてしまうので、長期間売り出し続けるよりも一度不動産会社に買取で査定をしてもらうことをおすすめします。
5. 買取業者を選ぶときの注意点
近年、中古不動産の業界において買い取りを行う業者は増えています。中には消費者が不動産知識が乏しいのを良いことに、相場の半分以下の価格で買い取ろうとするような買取業者も存在するようです。
悪質な買取業者に騙されないために、「買取」を取り巻く実態についても知っておきましょう。
5.1 買取勧誘のチラシには気を付けよう
人気のエリアや駅近のマンションであれば、「あなたのマンション高く買い取ります」などと謳ったチラシが家に入っていた経験がある方もいるのではないでしょうか?ですが、こうしたチラシでは実際の買取価格よりも高めに設定しているケースが多いので注意しましょう。
転売利益を主とする買取業者は、転売するための物件を仕入れておくために常に売ってくれる人を探しているため、あえて高い買取額を提示して、物件の所有者を売る気にさせようとする手法です。
実際には仲介の方が高く売れることがほとんどなので、早く売りたいではないならチラシに惑わされないようにしてください。
5.2 仲介会社に任せたはずが、買取に回されていることも
仲介と買取がそれぞれ別の会社が行っている場合でも、売り主が不利益を被る可能性はあります。
買取業者は物件を仕入れないと利益を得られないため、個人だけでなく仲介会社にももちろん営業をかけて自分の会社に物件を斡旋してもらえるように自分の会社に物件を紹介してくれたら6%、その物件が売れたら6%などのインセンティブを設定します。
すると、どういうことが起きるでしょうか?
たとえば、4000万円での売却を希望しているAさんがいたとします。仲介で4000万円で売却したときに得られる仲介手数料(売買価格 × 3% + 6万円)よりも、買取業者に3800万円で売ったときに得られる金額(6% + 6% = 売買価格の12%)の方が大きければ、Aさんには「3800万円でしか売れなさそうですね」と伝えて買取業者に紹介する、ということが考えられます。
このように、知識のない状態ですべての不動産会社や買取業者を信頼しすぎるのは危険なので、事前に相場を調べることが大切になります。
5.3 担当者との相性をチェックしよう
不動産会社を決めるときもそうですが、会社単位ではなく「この人にぜひお願いしたい!」と担当者で決めるのも1つの方法です。
信頼できる営業マンを見極める際に見るべきポイントを3つご紹介します。
こちらの要望を最初にしっかり確認してくれる
住宅に関する総合的な知識が豊富
自分の物件の特徴をしっかり把握してくれる
最終的には人と人との相性なので、直観で選ぶという方法もあるでしょう。「この人でいいのか?」と悩んだときにはぜひ参考にしてみてください。
6. 不動産の買取についてよくある質問
最後に、買取に関してよくある質問にお答えします。
6.1 不動産の買取には費用はかかるの?
買取の場合は仲介手数料はかかりませんが、不動産を手放すときにかかる費用は仲介のときと同様です。
買取価格がそのまますべて手元に残るわけではないので、出ていく費用のことも把握しておきましょう。
6.2 不要な家具や家電は自分で処理しないといけないの?
会社によりますが、必要ない家具や家電もまとめて引き取ってもらえるケースもあります。
買取では「とにかく早く手放したい」という方が多いため、そのままの状態で買い取れるように不要物を処分する業者と提携している会社も多いというわけです。
その場合、不要物の処分にかかる費用を計算して、あらかじめ買取価格から差し引いて提示してもらえます。