住宅ローンのを組む場合、住宅ローンの事前審査を通す必要があります。
その審査項目の一つに「勤続年数」があります。
本日は、勤続年数が短い場合における住宅ローン審査への影響や、審査を通過できるケースについて紹介します。
マイホーム購入は金額が大きい買い物であるため、購入時の経済的負担を減らすために住宅ローンを組んで購入する方が多いです。
住宅ローンを利用するにあたり、金融機関から住宅ローンを組むための審査が行われ、契約者の年収・職業・健康状態など、さまざまな審査項目において厳密な審査が行われます。
審査項目の中には「転職歴」という項目もあり、もし契約者が転職したばかりという場合は、住宅ローンを組みにくいといわれています。
なぜ勤続年数が短いと住宅ローンが組みづらくなるのか、その理由についてお話します。
勤続年数が短いと住宅ローンが組みづらくなる理由とは?
住宅ローン審査の主な審査基準
※住宅金融支援機構「2017年度民間住宅ローンの貸出動向調査結果」より
住宅ローンを契約する際に、お金を貸す金融機関側は契約者が住宅ローンの返済をすることが可能かどうかを審査をします。
転職したばかりの場合や、勤続年数が短い場合は、次の理由から、住宅ローン審査に通りにくいといわれています。
・勤続年数が短いと、収入の安定性が低いと判断されるため。
・勤続年数が短いと、今後の収入アップの見込みが判断できないため。
住宅ローン契約者へお金を貸す金融機関は、契約者の貸し倒れのリスクを回避するため、契約者の「勤続年数」を重要視する傾向があります。
勤続年数が短く、転職した回数が多い場合などは、新しい職場によっては年収が減る可能性もあるため審査に通過しない可能性もあります。
一方で、勤続年数が長い場合は昇給などによる給料アップも見込まれるため、収入も安定すると判断できます。
勤続年数が長くなれば長くなるほど、将来の年収も高くなる可能性が高いため、金融機関によっては「勤続年数が3年以上」という条件を、住宅ローンの契約の要件として設定している場合もあります。
転職したばかりで住宅ローン審査に落ちる理由は、継続的かつ安定的な収入が見込めないと判断された場合で、契約者の勤続年数は、金融機関にとって重要な審査項目となっております。
住宅ローンの審査時に勤続年数・勤務先はどう評価されるのか?
住宅ローンの審査において必要とされる勤続年数の目安としては「3年以上」とされています。
しかし、キャリアアップのための同業種への転職などの場合は、勤続年数が短くても審査時に有利に働くこともあるようです。
勤務先の評価については、勤務先の事業内容や過去の業績などによって判断されます。
一般的には、公務員や大手上場企業に勤務している場合は、住宅ローンを借りやすいとされています。
また、契約者の雇用形態も審査時にチェックされますが、多くの場合勤務形態は正社員であることが原則とされています。
しかし、最近では金融機関によっては派遣社員や契約社員の場合でも住宅ローンを借り入れできる場合もあります。
勤続年数が短い場合でも住宅ローンが組めるタイプがあります。
勤続年数が短い場合は住宅ローンを借りることが難しいとお話しましたが、勤続年数が短いからといって、必ずしも住宅ローン審査に落ちるわけではありません。
勤続年数が短い場合で、住宅ローンが組めるケースもあります。
具体的にどのような場合なら勤続年数が短くても住宅ローン審査が通るのか説明します。
住宅ローン審査で金融機関がチェックする際には、契約者がどのような転職をしてきたかについても確認されます。
仕事がなかなか続かず、頻繁に転職をしてきているといったケースの場合は、審査時にマイナスポイントとなってしまいますが、一方でスキルアップによる転職の場合は審査時に有利になることがあります。
これは、スキルアップの場合は収入が上がる可能性が高く、継続して転職先に在籍する可能性が高いと判断されるためです。
スキルアップの場合は、たとえまた将来に転職することがあったとしても、継続して安定収入が見込める可能性が高く、住宅ローンの返済が可能であると判断されやすいといいます。
年収の推移がスキルアップによって上がっていれば、金融機関側の貸し倒れリスクも低いと判断されるでしょう。
また、転職先の業界や業種に一貫性がある場合は、専門分野のスキルや経験が活かされる可能性が高いため、同じ業界や職種への転職の場合は好印象を持たれやすいといいます。
しかし、逆にまったく違う業界や業種への転職の場合では、収入が安定できないと判断されやすくなります。
転職の場合で、もしグループ会社や関連会社へ転職した場合は、金融機関によっては転職と見なさない可能性もあります。
ただ、会社の規模が小さいグループ会社や関連会社への転職の場合は、収入アップの可能性が見込めず、金融機関の印象は悪くなる可能性がありますので注意が必要です。
勤務先の会社の要請などにより、グループ会社に転籍といったケースは、実質的には同じ企業に勤続しているものと判断されることが多いといいます。
住宅ローンを検討している方で、もしグループ会社に転職したばかりという方は、一度金融機関側に転職と判断されるかどうか、確認する必要があります。
転職して勤続年数が短くても、「士業」への転職の場合においては、金融機関の印象が良くなる可能性があります。士業とは、弁護士や税理士、公認会計士などを指しており、弁護士として弁護士事務所に正社員として在籍している場合などは、住宅ローンの審査も通りやすくなるでしょう。
しかし、一方で注意したいのが、「独立」の場合です。
士業の独立の場合は、安定した収入を得られる可能性が不確定と判断されやすく、金融機関によってはあまりいい印象を持たれない場合があります。
社会的地位が高いと思える職業であっても、個人事業主の場合は安定性が見込めず、審査時に不利になる可能性もあります。
弁護士として独立し、代表として働いている場合は、事業年数など、実績についての基準を満たすことも条件として加わることを覚えておきましょう。
転職後に住宅ローン利用を検討している方は、たとえ有利な転職の場合でも、転職している回数が多い場合などは、金融機関からの信頼を得にくくなる可能性があります。
会社の規模が大きかったり、年収が増加している場合でも、1年後ごとに何社も転職していては、収入が安定して継続されるのか、判断がつきにくくなります。
ヘッドハンティングなどで転職した場合でも、転職スパンについては注意する必要があります。
また、転職先の評価として、財務内容がいい場合は、勤続年数が短くても住宅ローン審査時に有利になりやすくなりますので、転職先の判断材料として金融機関に伝えるのもおすすめです。
転職の内容によっては、住宅ローン審査において不利になる場合と有利になる場合がありますが、有利になるアピールポイントがある場合は積極的に伝えることを意識しましょう。
次に、勤続年数が理由で住宅ローンの審査に落ちてしまった場合の対策について紹介します。
勤続年数は金融機関によっては「3年以上」などの基準を設けているため、転職などの場合は複数の金融機関による住宅ローンを検討する必要があります。
今回は、「フラット35」など、勤続年数の設定がない住宅ローンや、勤続年数の合算など、住宅ローンの勤続年数が条件に満たない場合の対処法について紹介します。
住宅ローンを検討している方なら、フラット35という名前を聞いたことがあるかもしれません。
フラット35とは、住宅金融支援機構と呼ばれる、独立行政法人が扱っている長期固定金利の住宅ローンの商品名のことをいいます。
民間の銀行ではなかなか行っていない最長35年間の長期固定金利の住宅ローンを扱っていたり、勤続年数の要件がないといった特徴があります。
そのため、転職したばかりという方でも、フラット35なら勤続年数の要件を満たすことができるため、住宅ローンを組むことが可能になります。
例えば、転職して1カ月という方や、契約社員や派遣社員などの非正規雇用の場合でも申込みができるため、一般の金融機関に比べると通りやすいといわれています。
しかし、住宅ローンを利用するにあたっては、購入する物件にも一定の水準が求められます。
そのため、契約者の審査と物件の審査基準の両方をクリアすることが求められます。
もし、これから一戸建てのマイホームを購入したいと考えている場合は、フラット35が設定している条件を満たした建物を建築すれば住宅ローンを組むことができます。
しかし、建売住宅やマンション、中古物件の購入を検討している場合は、物件が基準を満たしているかどうかが重要なポイントとなり、ときには基準を満たすために、追加工事費用が発生するケースもあるようです。
勤続年数が短くても、フラット35なら条件を満たすことになりますが、契約前に物件の条件についてもよく確認するようにしましょう。
前職の勤続年数と合算できないか相談する
同業種への転職の場合であったり、年収がアップしたり、資格職などへの転職の場合においては、前職の勤続年数と合算できる場合もあるといいます。
もし前の勤務先を辞めて無職の期間が1カ月程度の場合は、勤続年数の合算が可能かどうか金融機関に相談してみるようにしましょう。
例えば、前の勤務先に10年勤務し、その後新しい勤務先に1年勤務し年収が上がっているような場合は、勤続年数11年として審査を行ってもらえば、その分審査も通過しやすくなります。
勤続年数1年と勤続年数11年とでは、審査に与える影響は全く異なります。
合算できる可能性がある場合は、住宅ローン申込時に審査担当者に伝えるようにしましょう。
「転職直後に住宅ローンを申し込んで審査に落ちてしまった」というケースや、「何度も転職をしているため、住宅ローンの審査に受からない」といったケースもあるかもしれません。
しかし、金融機関側は、住宅ローンの審査に落とした理由については明かしてくれないため、勤続年数が理由で審査に落ちたわけではないという可能性も十分考えられます。
住宅ローンの審査に落ちた場合は、どのような理由が考えられるのか、審査に落ちた理由を分析することも大切なことです。次の住宅ローン審査では確実に受かりたいという場合は、まずは以下の点についても振り返ってみましょう。
・住宅ローン以外に別のローンを組んでいた。
・過去に滞納記録があった。
住宅ローンだけではなく、教育ローンや自動車ローンなど、すでに複数のローンを組んでいる場合は、住宅ローンの審査においても影響があるといいます。
返済負担額(返済比率)が上がれば上がるほど、住宅ローンの審査に受かりづらくなることも覚えておきましょう。
また、過去にクレジットカードなどで返済遅れなどがあった場合も、審査に強い影響を与えるといいます。
住宅ローンの審査に落ちてしまった場合は、過去の信用情報を確認し、現状を把握することも大切です。
勤続年数が住宅ローンの審査に影響するのは今までお話した通りですが、中には契約者の意思とは関係なく転職を余儀なくされたケースもあるでしょう。
その場合、住宅ローンにおける勤続年数の審査は通常の転職とは違うのでしょうか?
会社都合の退職や自営業の場合について紹介します。
・勤務先が倒産した、会社都合の退職の場合
転職とは、キャリアアップや自己都合だけではなく、ときには働いていた会社が倒産してしまった場合に転職を余儀なくされたというケースも考えられます。
会社自体が倒産してしまった場合は本人の都合ではないため、審査時に考慮されるのではと考えがちですが、会社都合の退職は基本的には通常の転職と同じ扱いとなります。
また、金融機関によっては、住宅ローンの審査時に前職の会社名を書く必要がある場合もあります。
会社が倒産してしまった場合は、会社名をただ書くだけではなく、倒産する前に転職したのか、倒産してから転職したのかなど理由を説明するようにしましょう。
リストラなど、会社都合で退職した場合は、転職をして少なくても1年以上継続して勤務し、住宅ローンの頭金に充てる自己資金を増やした上で住宅ローン審査を受ける方が、審査に通りやすくなります。
無理のない返済が可能かどうか、契約をするタイミングについてはしっかりと考えた上で決めるようにしましょう。
・自営業の場合
フリーランスや個人事業主、会社の経営者など、自営業者は経済状況によって収入に差が出る場合があります。
また、病気やケガで事業がストップしてしまうというリスクも考えられるため、自営業者の住宅ローン審査では、「安定した収入が継続的に見込めるか」が特に重要視されるといいます。
長期間に渡る返済が可能かどうかについて、自営業の場合は会社員よりも審査基準のハードルが高いとされていますが、気になる勤続年数については、どうなのでしょうか?
会社員は前年度の年収によって、住宅ローンの審査が行われますが、フリーランスや個人事業主などの自営業の場合は、直近3期分の「所得」を年収とみなし、審査されます。
フリーランスや個人事業主は、多くの金融機関において直近で3期分の確定申告書の提出が必要となり、会社の経営者の場合は本人の収入を証明する直近3年分の源泉徴収票、さらに3期分の決算書を提出しなければなりません。
そのため、勤続年数については、営業年数として3年以上はもちろん、業績が安定していることが条件として求められます。会社員と比べると、自営業の場合は評価が厳しいことが多く、「事業継続性」という点において事業規模や事業年数などが審査されます。
勤続年数と住宅ローン審査の関係については、同業種への転職や転職後の収入アップ、専門資格を生かした転職においては、勤続年数が短くても有利に働くことがあるります。
しかし、その場合は転職内容について証明できる資料を事前に準備することも大切なポイントとなります。
例えば、年収アップの場合は転職時の採用通知書や条件通知書、オファーレターなど、年収が記載されている書類を用意することで審査時の判断材料になるでしょう。
せっかく経験を活かした転職で年収がアップしたとしても、金融機関側にその内容を提示することができなければ、審査時にマイナスとなってしまう場合も考えられます。
勤続年数が短くても住宅ローンを組むことは可能ですので、あらかじめ提出書類についても準備するようにしましょう。