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実は不動産の権利証はありません。

カテゴリ:不動産コラム
よく映画やドラマで借金の担保で不動産の権利証を奪っていくシーンがありますが、あれは演出であって、実際には不動産の権利証なんてものはこの世に存在しません。

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「でも、うちには権利証あるよ」

と、言われる不動産所有者の方もいらっしゃるでしょう。
実はそれ、正確には「登記済証」という書類なんです。


では、「登記済証」とは何なのでしょうか。

例えば、ある土地を自分の所有物だと主張したところで、土地に名前を記すわけにもいきませんし証明のしようがありません。

そこで「不動産登記」を行うわけです。

不動産登記とは、土地や建物の所在地や面積、所有者の住所・氏名などを
登記所(法務局)にて公の帳簿(登記簿)に記載することです。

公の帳簿ですから誰でも閲覧取得が可能で、権利関係などの状況が誰にでも分かります。

つまり不動産登記とは、所有者がその所有物が自分のものであることを第三者に対抗するために行うものであるとも言えます。

この不動産登記を行った際に、登記所(法務局)が登記名義人に交付する書面のことを「登記済証」と言います。

これがいわゆる「権利証」と呼ばれるものの正体です。

「権利証ちゃんと持ってるよ」という方は、綴じられている書類の中を確認してみてください。

登記の原因証書である「売渡証書」や「登記申請書」などといった項目の書類があり、最終ページに法務局による朱色の印判が押されていると思います。

これはつまり、管轄の登記所(法務局)にて登記の申請を行い、きちんと受理されました、という性質の書類だということなのです。

ですから、「登記済証」自体が不動産の権利を表しているわけではなく、登記の申請人が登記名義人本人であることを証明するための本人確認の手段の一つに過ぎません。

ですから、多くの方が誤解されている権利証(正確には登記済証)が誰かに奪われたとしても、当該不動産が他人の手に渡ることはあり得ません。

※説明する必要もないでしょうけど、身分証明証、実印、印鑑登録証も一緒に奪われたらアウトですよ…


要は、不動産所有の証明は書類等によるものではなく「登記」をもって行われるということです。

登記済証には申請を行った登記所(法務局)の印判が押印されており、受け付けた日付と登記番号が記されています。

なぜ登記済証が権利証と呼ばれるようになったのでしょうか?

登記済証の表紙には「登記済権利証書」などと毛筆体で仰々しく書かれていたりしますが、実はこれ登記の依頼を受けた司法書士が勝手に作っただけの表紙なんです。

いつ、どこで、誰が権利証なんて言い出したかは不明です。

これについては、司法書士が高額な報酬を受け取るために、登記という単純な事務作業を大層な仕事に見せかけるため、大げさな装飾を施していると意地悪な見方をする人もいます。

私の見解は少し違います。

前述したとおり、登記済証そのものが所有権を表すものではありませんので、紛失したからといって、不動産の所有権を失うわけではありません。

しかし、重要な書類であることに違いはなく、大切に保管すべき書類です。
これが、登記済証と言われても普段聞き慣れない単語で重要性を感じませんよね。
登記の申請が受理されたことを証明する書類と説明をされたところで、ついつい保管もずさんになってしまう可能性もあります。

ところが、権利証と名がつくとどうでしょう?

誰もがイッパツで重要書類であるという認識になります。
重要な書類なので大切に保管してもらいたい、という気持ちから権利証という表現が根付いたのではないかと想像します。

なお、不動産登記法が改正され(施行日は2005年3月7日)、本人確認は「登記識別情報通知」によることとされたため、登記済証の発行制度は廃止されました。

登記済証から登記識別情報通知への移行については、全国各地順次に行われましたので、多少誤差はありますが、埼玉県においては2007年以降に不動産を買われた方は登記識別情報通知をお受け取りになられていると思います。

登記識別情報通知とは・・・

登記完了後に、登記名義人に対して登記識別情報を通知するために交付される書面のこと。

登記識別情報(12桁の秘密の番号)を書面に印刷し、その登記識別情報の部分に、一度剥がすと二度と貼れない特殊な目隠しシールを貼った状態になっている。
このような特殊なシールにより登記名義人以外の者が、登記識別情報を盗み見ることを防止している。

以上参考になればと思います。



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柳田 直喜

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