埼玉開発では、市街化調整区域内の農地について相談を受けるケースが多くあります。
特に「売りたい方」からの様々な相談です。
市街化調整区域は原則として建築不可で、住宅を建てることができません。
理由は、農地を農地以外に使用したい場合には、農地法の規制を受けていますので農業委員会の許可又は届出が必要だからです。
今回は「売買契約が締結してもすぐには農地法の許可が下りない。」いわゆる仮登記(正式には「所有権移転請求権仮登記」といいます。)での売買取引についてお話していきます。
●相談内容について
【売りたい方】
1⃣ 相談内容・・・両親が住んでいた家(周辺農地と共に)を売却のご相談
(理由)
・後継者がいない。
・ある程度、まとまった広さがあり農業機械が入ることが出来る農地でなければ借りる農家は居ない。
・雑草等がすぐに生えるため、管理が出来ない。周辺農地に迷惑を掛けたくない。
2⃣相談内容・・・亡くなった親が、仮登記を付けた農地があり、何とか処分したい。
(理由)
・考えられない高値で購入(※土地代は全額支払い済み)していたことが発覚。登記名義人は、未だ売主名義であり購入した農地には仮登記が設定している状態。自分が生きている内に処分したい。
・子供たちに、この複雑な状況を引き継がせたくない。
●すぐに農地法の許可が下りない場合の一般的な不動産取引とは?
すぐに農地法の許可が下りない場合は、以下の条文を特約事項に追記して売買の取引を行う方法があります。
「第○条 本物件のうち、○○番、○○番及び○○番は、地目が「畑」・「田」であり、現時点での所有権移転登記ができないため所有権移転請求権仮登記とする。将来条件が整い買主に所有権を移転する際には売主は無償無条件で農地法申請及び登記申請の一切に協力するものとする。なお、その際に要する費用は買主の負担とする。」
●仮登記に関する注意点とは?
農地の売買契約を締結して、仮登記の状態であることについて以下の事に注意が必要です。
1⃣ 農地法の許可がなければ売買契約が締結されていても、農地の所有者は、仮登記権利者(買主)ではなく、所有者(売主)となります。
2⃣ 買主(仮登記権利者)が農地の代金を全額売主に支払い引渡を受ける事は、違法転用する場合は当然ですが、農地を農地のまま引渡を受けた場合も農地法違反となってしまいます。
3⃣ 売主に対し農地法上の許可申請に協力要請する(許可申請協力請求権)は、売買契約成立の日から10年の経過により時効によって消滅する恐れがあります。
4⃣ 当事者が当時の売買契約書を紛失しまった状況で、将来的に許可申請を行う際に、売主側に相続があった場合は、その相続人に相続登記を行い手続きに協力するよう説明することは労力を要します。なぜなら、契約当時のことは、知らず売買代金も相続人が受領していないケースが多いからです。
●最後に
市街化調整区域内の農地の種類によっては、ここ数年間は太陽光発電用地(第三種農地)として売買並びに賃貸借での取引が盛んでした。その影響なのか分かりませんが、市街化調整区域内の農地でも、簡単に取引が出来るような錯覚をお持ちの方もいるようです。しかし、「農地法は、最も厳しい法律」と呼ばれている法律です。実際、農地法だけでなく都市計画法等のその他の規制も関わってきます。
やはり、事を起こす前には必ず埼玉開発のような専門家に相談されることをお勧め致します。