新型コロナウイルスの感染拡大により緊急事態宣言が発令され、多くの事業者が営業を自粛しました。
営業を自粛したことで、売り上げは無くなりますが、家賃などの経費は変わらずかかってしまいます。
そこで、新型コロナウイルスの影響を受けたことで家賃を支払うことができなくなったテナントを支援する制度である「特別家賃支援給付金」が正式決定しました。
新型コロナウイルスの感染拡大後、家賃の支払いが難しくなっているテナントも多く、家賃の回収ができていない不動産オーナーにとってもありがたい制度といえるでしょう。
特別家賃給付金とはどのような制度で、誰にどのくらい支給される制度なのでしょうか?
今回は特別家賃支援給付金について分かりやすくお話します。
特別家賃支援給付金とは?
特別家賃支援給付金とは、どのような制度なのでしょうか。
まずは制度の概要について見て行きます。
新型コロナウイルスの救済策として正式決定
特別家賃支援給付金は、新型コロナウイルスの影響で家賃を支払うことが難しくなったテナントを救済するための支援策です。
新型コロナウイルスの影響で緊急事態宣言が発令され、飲食店等は営業自粛を余儀なくされました。
その後緊急事態宣言が解除されたものの、客足はすぐには回復せず、飲食店等には厳しい状況が続いています。
このような状態が続くと、中小企業の経営や個人事業主の生活が成り立たなくなるため、救済策として決定したのが特別家賃支援給付金です。
事業を継続するための「家賃」を補助するための制度
特別家賃支援給付金は、事業を継続するための家賃を補助するための制度です。
飲食店の経営や事務所等を設置して事業をする場合、家賃は大きな負担となります。
新型コロナウイルスの影響でお店の運営ができなくなったとしても、家賃は固定費として毎月かかってしまうもの。
そのため、家賃負担が重く廃業を迫られる人も多くなることが予想されます。
家賃を理由に多くの事業者が廃業してしまうと、新型コロナウイルスの感染が収束したとしても街はゴーストタウン化し、経済に活気が戻らなくなってしまいます。
このような事態を防ぐために、家賃の支払いを支援する給付金として正式決定しました。
もう一つ、先に決定した中小企業向けの新型コロナウイルスの救済策が、雇用調整助成金です。
雇用調整助成金は新型コロナウイルスの感染拡大前からあった制度ですが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた企業への救済策として適用範囲が拡大されています。
事業にとっての2大固定費は人件費と家賃と言われており、特別家賃支援給付金が正式決定したことで、人件費と家賃という2大固定費に対して対応がなされたということになります。
固定費に対しての救援策は中小企業や個人事業主にとって大きな効果があるでしょう。次に特別家賃支援給付金がどのような方が対象となるのか確認しましょう。
特別家賃支援給付金の対象者
特別家賃支援給付金の対象者は前提として中堅企業、中小企業、小規模事業者、個人事業者である必要があります。
また、2020年5月~12月の間に以下の条件のどちらかに該当する必要があります。
いずれか1カ月の売上高が前年同月比50%以上減少
連続する3カ月の売上高が前年同期比30%以上減少
この条件に当てはまる企業や個人事業主が特別家賃支援給付金の給付対象者となります。
特別家賃支援給付金の趣旨は新型コロナウイルスで影響を受けた人への救済策です。
そのため、売り上げが大きく落ち込んでいる企業や個人事業主に対して給付がなされます。
売り上げが減少していない企業や個人事業主に対しては救済する必要がないため、この制度を利用することができません。
特別家賃支援給付金により多くの中小企業や個人事業主に対して給付金が支払われますが、一部では不公平であると言われています。
その理由は土地・建物を購入し、ローンとして支払っている事業者には給付金が支払われないということです。
たとえば、不動産を借りて毎月50万円の「家賃」を支払っている人には給付金が支払われますが、不動産を購入して、毎月50万円の「ローン」を支払っている事業者には給付金が支払われません。
このような場合には不動産を売却して、現金化するしか方法が無いような状況に追い込まれる可能性も高いため、事業を継続できなくなるという批判もあります。
特別家賃支援給付金の算出方法
次に特別家賃支援給付金の算出方法を確認しておきましょう。
算出方法は法人と個人で異なります。
法人の場合
法人の場合は直近の支払い家賃上限75万円までの3分の2が支払われます。
つまり月間に支払われる上限金額は50万円(75万円×2/3)となります。
ただし、法人の場合は複数店舗を運営する場合は例外的に上限金額が100万円となります。
給付期間は最長6か月ですので、1店舗運営の場合は最大300万円。複数の店舗を運営している場合は最大600万円の給付を受けられるということになります。
給付金は家賃の支払い上限に達していない場合でも家賃に応じて給付金が支払われます。
例えば、家賃が30万円の場合は20万円(30万円×2/3)が最大6か月分支払われますので、合計120万円支払われることとなります。
この制度の給付額は非常に大きいため、新型コロナウイルスで影響を受けた企業にとって大きな支援となるでしょう。
個人事業主の場合
個人事業主の場合は、直近の支払い家賃上限37万5,000円までの3分の2までが支払われます。
つまり上限金額は25万円です。個人事業主の場合も複数店舗を運営する場合は例外的に上限が50万円となります。
給付期間は法人と同じく最大6か月ですので、合計の最大給付金額は1店舗運営の場合は150万円、複数店舗運営の場合は300万円です。
個人事業主の場合も上限金額に達していなくても家賃に応じた給付金が支払われます。家賃が30万円の場合は20万円(30万円×2/3)が最大6か月分支払われますので、合計120万円支払われることとなります。
個人事業主にとっても、事業を継続するうえで大きな救済措置となることは間違いないでしょう。
特別家賃支援給付金の注意点
不動産オーナーにとって、特別家賃給付金の正式決定は朗報と言えるでしょう。
給付金が支給されることで、新型コロナウイルスの影響で家賃の支払いが難しくなっていたテナントから滞納していた家賃を回収できる可能性もあります。
しかし、特別家賃給付金には注意点もあります。どのような注意点があるか確認しておきましょう。
給付金を家賃に使ってくれるとは限らない
特別家賃支援給付金は事業を継続するための家賃を支払うために、給付金が支払われる制度です。
しかし、給付金を家賃として支払うようにする強制力はありません。
そのため、給付されたお金を設備投資や商品の仕入れ等、家賃以外に使ってしまう可能性もあります。特に新型コロナウイルスの感染拡大後はソーシャルディスタンス等の新しい生活様式を取り入れて店舗を運営する必要があります。
飛沫感染の防止のためのボード設置や配達用のバイク購入など、営業スタイルの変更によりかかる費用も多くあります。そのため、滞納している家賃が自動的に払われるとは限りません。
また、特別家賃支援給付金は不動産のオーナーではなく、テナントが申請することになっているため、オーナーはいつ頃申請したのか、給付金がいつ入るのかを確認することができません。
家賃を滞納しているテナントがある場合はこの制度を活用して、早急に家賃を支払うように伝えておく必要があるでしょう。また、借主がこの制度を知らない可能性もありますので、申請漏れがないように借主に伝えておくとよいでしょう。
支給されている間に業績の改善が必要
特別家賃支援給付金は非常に大きな補助が受けられる制度です。
しかし給付金は6か月と期間が決まっています。そのため、支給されている間に業績の改善が必要です。
業績が回復しなければ、すぐに家賃は払えなくなってしまうため、特別家賃支援給付金で家賃が支払われたからといって安心できるわけではありません。
今後、新型コロナウイルス感染が完全に収束するのがいつになるのかはまだわかりません。
第二波、第三波の感染拡大も懸念されています。このような状況でも今後業績が回復しそうな業種なのか、改善に向けて改革は進んでいるのかもよく確認しておく必要があります。
最後に
特別家賃支援給付金は不動産を借りて事業を継続している事業者にとって大きな支援となる制度です。
新型コロナウイルスで事業を継続することが難しくなった事業者もこの支援によって息を吹き返すことも多いでしょう。
また、家賃の回収に苦しんでいる不動産オーナーにとっても朗報と言えるでしょう。
給付額も法人の場合は最大600万円、個人事業主の場合は最大300万円と金額が大きい点も特徴です。この給付金によって支払いが困難になっていた家賃を支払うことができるテナントも多いでしょう。
ただし、給付金として支払われお金が家賃として必ず支払われるという保証はありません。感染対策や新しい生活様式での営業活動に必要な経費に使ってしまう可能性もありますので、家賃の滞納がある場合はしっかリ督促をしておくことも重要です。
また、給付期間は6か月と決まっていますので、その間に業績が回復しなければ、また家賃が支払えなくなってしまいます。給付金が出ている間に業績が回復していきそうかもあわせて注視しておく必要があります。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、不動産オーナーにとってもテナントにとっても厳しい状況が続きますが、特別家賃支援給付金の正式決定は大きな支援となることは間違いありません。