日本国内では「働き方改革」の推進や「新型コロナウィルス」の影響もあり、今、テレワークの普及が急激に加速しています。
今後、在宅勤務や時差通勤などが定着してくると、住まい選びの基準が大きく変わっていくことが予想されます。
テレワーク普及により注目される「都心40~50kmの郊外エリア」の魅力と価格相場についてお話します。
※本コラムでは「在宅勤務」「リモートワーク」「モバイルワーク」「サテライトオフィス勤務」等、時間や場所にとらわれない働き方を総称して「テレワーク」と記述します。
1、そもそもテレワークとは? 今後テレワークが急速に普及する理由
テレワークとは、「tele = 離れた所」と「work = 働く」をあわせた造語で、時間や場所にとらわれない自由な働き方を意味します。今後このテレワークの急速な普及が見込まれていますが、その理由は何なのでしょうか?
① 政府主導の「働き方改革」
理由としてまず挙げられるのが、政府が主導する「働き方改革」です。時間や場所を有効に活用し、誰もが働きやすい柔軟な労働環境の実現に向けて、以下のような3つの形態を推奨しています。
・「在宅勤務」
所属するオフィスに出勤しないで自宅を就業場所とする勤務形態
・「モバイルワーク」
移動中(交通機関の車内など)や顧客先、カフェなどを就業場所とする働き方
・「サテライトオフィス勤務」
所属するオフィス以外の他のオフィスや遠隔勤務用の施設を就業場所とする働き方
政府は「2020年には、テレワーク導入企業を2012年度(11.5%)比で3倍、週1日以上終日在宅で就業する雇用型在宅型テレワーカー数を全労働者の10%以上」にすることを目標にテレワークを推進しています。
② 現在17%がテレワークを実施。潜在的には45%の実施者を見込む
一方、実際に働いている会社員や公務員はどうでしょうか。2020年2月にリクルート住まいカンパニーが発表した「テレワーク×住まいの意識・実態調査」によると、「会社員、公務員」の17%がすでにテレワークを実施していると回答しており、また28%がテレワーク導入を考えている、または興味があると回答しています。これを合わせると近い将来45%程度の普及が見込まれることになります。
③新型コロナウィルスで普及が加速
そしてテレワークの普及を加速させそうなのが、2020年2月ごろから世界中で感染が拡大している新型コロナウィルスの影響です。政府は感染拡大を防ぐため、企業に対し在宅勤務や時差通勤を推奨しており、企業側も社員の健康維持の観点から、早急に対応せざるを得ない状況となっています。その結果として、これまでテレワークに二の足を踏んでいた企業でも社内規定や通信インフラなどの環境整備が進み、テレワーク普及に弾みがつきそうです。
2、テレワーク普及で物件探しの基準が変わる。「都心」「駅近」は過去のものに?
このようにテレワークが広く普及していくと、住まいの選び方にはどのような変化が生まれるのでしょうか。
①通勤の自由度が高まることでエリアの選択肢が広がる
住宅購入(=物件選び)でもっとも重視されるポイントは「立地(エリア)」です。これまでは毎日決まった時間にオフィスに行くことを前提に、できるだけ楽に通勤できる立地、つまりオフィスから近い都心部に人気が集まり、特に駅に近い物件が好まれる傾向がありました。
しかしテレワークの普及で、この「通勤」に大きな変化が生まれます。例えばオフィスに通勤するのが週2日となれば、通勤時間はさほど苦になりませんし、時差通勤で空いている時間にゆっくり座って通勤できれば、都心部にこだわるメリットは小さくなります。
逆に会社から離れた郊外エリアに住むことで、サーフィンやアウトドアなどの趣味をもつ方にとっては、海や山の近くに暮らしながら仕事ができる、夢のような環境を手に入れられるかも知れません。また子育て世帯にとっても、駅近ではなく保育園や公園に近い場所に住めば、仕事と子育てを両立できる環境を手に入れられるでしょう。
このようにテレワークが普及し、「通勤」の概念が変わると、住宅購入におけるエリアの選択肢が大きく広がることになります。
②自宅に仕事がしやすいスペースや環境が必要になる
テレワークが普及すると、エリアだけでなく住まいそのものに対する要望も変化します。現在ポピュラーになっている「○LDK」という間取りは、食事スペースとリビング+個室で構成されますが、在宅勤務が普及すれば、そこに「仕事をするスペース」が必要になってきます。例えば、リビングの一部にカウンターのようなワークスペースを設けたり、個室の一部に書斎を作ったり、時には来客用のスペースなども必要になるかも知れません。いずれにしても、これまでの間取りプラス・アルファの空間が必要になるわけです。
前述のリクルート住まいカンパニーの調査によると、『テレワークをきっかけに、自宅を仕事に適した環境に整えている割合』は70%という高い結果が出ており、具体的には「仕事の資料、PCなどの置き場、収納スペースをつくった」(テレワーク実施者の28%)、「ネットワーク環境を整えた」(同 26%)、「ホワイトボード・モニター・プロジェクターなどを用意した」(同 24%)などが上位となっています。
テレワークが普及することにより、家族の生活スペースだけでなく、集中して仕事ができる空間と設備が求められるようになります。
3、『都心まで電車で1時間』 ほどよく近い、都心40~50km圏の魅力とは
テレワークの普及により通勤の自由度が高まり、自宅内にワークスペースの要望が高まる中で、今注目されているのが、都心から電車で1時間前後の都心40~50km圏の郊外エリアです。その魅力を探ってみましょう。
①物件価格が安い
都心から電車で1時間前後の郊外エリアの一番の魅力は、物件価格の安さです。不動産の価格は基本的に土地の価格に比例します。逆に建物の価格は地域によってさほど変化しません。つまり都心部と比べて地価の安い郊外の街では、同じ広さの物件をより安く買うことができ、同じ価格であればより広い物件を買うことができます。エリアによっては、都心部の半分~1/3程度で購入できることも少なくありません。
また、郊外エリアには開発できる土地が多く残っており、新興住宅地の新築物件や分譲地も多いので、きれいな街並み、広めの新築一戸建、注文住宅などを検討している方には大きな魅力となります。
②物価が安い
郊外エリアのもう一つの魅力は物価の安さです。都心部と比べ賃料や人件費などのコストが安く、生産地にも近いため、食料品や日用品などが都心部より1~2割くらい安いことが多いようです。また、不動産価格が安いということは、固定資産税や都市計画税などの税金も安くなります。購入時だけでなく、月々の支出も安く抑えられれば、生活に余裕が生まれます。
③自然が豊かで観光地にも近い
郊外エリアは、金銭的なメリットだけでなく環境の良さも大きな魅力です。都心から電車で1時間前後のいわゆるベッドタウンは、駅前やロードサイドなどの中心部に商業施設や文化施設がコンパクトにまとまっている一方、少し離れたエリアには手つかずの自然が残っていて、都市の利便性と豊かな自然環境がうまく共存している街が多いように思います。また週末に少し足を伸ばせば、気軽に温泉などの観光地などに行けるのも大きな魅力と言えるでしょう。
④都心部への電車通勤も可能
テレワークで通勤の自由度が上がっても、まったくオフィスに行かなくていいという方は少ないようです。いざ出勤となっても、1時間程度の通勤時間ならさほど苦にはなりません。むしろ郊外には始発駅が多いので、ゆったり座って通勤できるメリットの方が大きいかも知れません。
次回は買うならどのエリアが良いかお話していこうと思います。