悪徳業者と契約してしまった場合、不動産の売主はお金や不動産をだまし取られてしまいます。
ただ、悪徳企業から消費者を守る法律として、クーリングオフという制度が認められていることをご存知の方も多いでしょう。
今回は、不動産売買の取引でもクーリングオフを利用できるのか、利用する場合の注意点にはどんなものがあるのかを解説していきます。
不動産売却の取引でもクーリングオフは利用可能です。
●クーリングオフとは
クーリングオフとは、一度は両者で合意した契約をキャンセルできる制度のこと。
不動産に限らず、商品やサービスを売買する場合、もっとも基本になるルールは「売主と買主が同意していればOK」という民法上のルールです。
契約の内容が法律に反するものでない限り、一度交わした契約を解除するためには両者の合意が必要になります。
ただし、不動産売買のように、売り主や買い主が不動産に関する知識を持っていない場合、不動産会社側は契約書や契約内容を好きにいじって一方的に有利な合意を結ぶことも不可能ではありません。
いくら両者の合意さえあれば売買契約を交わせるといっても、一方的にどちらかが損をするような取引を認めてしまうと、専門知識を持たない売り主・買い主側が損をしてしまいます。
そこで、一定の条件を満たしている場合、売主や買主側から契約をキャンセルできる制度が認められているのです。
不動産売買の場合、昭和55年の「宅地建物取引業法」改正でクーリングオフ制度が正式に認められているため、条件によっては不動産の売買契約をキャンセルできます。
●契約締結から8日以内であれば不動産売買契約を解除できるます。
不動産取引におけるクーリングオフの期限は、契約してから8日以内です。
ちなみに、クーリングオフは一般的に訪問販売などに対抗するために手段として知られているため、「商品やサービスを購入する人が利用するもの」というイメージがありますが、不動産売却の「売り主」も利用できます。
ただし、利用条件は非常に厳しいものとなっています。
それでも、売主がクーリングオフを使えることを知っておくと、不要な不動産売買トラブルは回避できるでしょう。
ただし不動産取引のクーリングオフは利用条件が厳しいです。
●クーリングオフの適用条件
不動産取引においてクーリングオフを利用できる条件は、以下の通りです。
不動産の売り主が個人ではなく「不動産会社」である
不動産の売買契約を事務所以外の場所で交わした
物件の引き渡しや売買代金の支払いをまだしていない
契約の締結から8日以内にクーリングオフを申し出ている
クーリングオフを書面で申し出ている
基本的に、上記すべての条件を満たしている場合にのみクーリングオフを利用できます。
一般的な不動産売却の手順となる、「媒介契約を結んで自分の不動産売却を仲介してもらう」場合、クーリングオフ制度は利用できません。
売主としてクーリングオフを利用できるのは、「不動産会社を頼らず、個人で不動産を売却する場合」だけなのです。
もともと、クーリングオフという制度そのものが消費者(買主)を守るためのものなので、売主側にとっては使いづらい制度となっています。
不動産売却手続きは非常に複雑で、不動産会社を頼らず完全に個人で売却するのは難しいものです。
売主としてクーリングオフを利用できるのは、不動産を親族や友人・知人同士へ直接売却するケースになるでしょう。
悪徳業者と契約してしまった場合はどうすれば良いか?
●売買契約を交わす前に仲介業者を変更する
一般媒介契約の場合、契約期間の上限はありませんが、専任媒介契約や専属専任媒介契約は3ヵ月ごとの更新制です。
たとえ媒介契約を交わしていても、契約更新のタイミングで「更新しない」という意思表示をすれば、正式な手続きとして悪徳業者との契約を解除できます。
ポイントは、売買契約を結ぶ前に契約解除を申し出ることです。
不動産会社にお金を支払うのは、買主が見つかって売買契約を交わしたときです。
媒介契約を交わしていても、売買契約締結前なら基本的にお金はかかりません。
かかったとしても、広告費の実費程度なので、金銭的な被害を最小限に抑えられます。
ただ、悪徳業者を相手に直接契約解除の連絡をすると引き止められる可能性が高いです。
契約解除の申し出は、書面で伝えましょう。
また、一般媒介契約を結んでいる場合も、売買契約を交わす前に「別の会社で契約することにした」など適当な理由をつけて、契約解除を申し出ることをおすすめします。
最後になりますが、不動産売却でも、クーリングオフ制度は利用可能です。
ただ、売主としてクーリングオフを利用するのは難しく、悪徳業者対策としてクーリングオフを利用するのはおすすめできません。
悪徳業者との契約を解除したい場合、媒介契約の更新タイミングに合わせて書面で契約解除を求めるのがおすすめです。